強迫性障害の主な治療法3つ―薬物療法|曝露反応妨害法|巻き込みを防ぐ―

―家族や周囲が共倒れになる前に知っておきたいこと―

強迫性障害(OCD)は、強い不安や違和感が頭から離れない「強迫観念」と、それを打ち消すために何度も行動してしまう「強迫行為」が特徴の精神疾患です。さらに症状が悪化すると、本人だけでは不安を処理できなくなり、家族や周囲に確認や行為を押し付けてしまう「巻き込み」へと発展することもあります。

強迫性障害には治療法が存在しますが、症状は根強く、短期間で改善するものではありません。本人はもちろん、家族も長期的な視点で向き合う必要があります。

本記事では、強迫性障害の主な治療法である
①薬物療法 ②曝露反応妨害法 ③巻き込みを防ぐ方法
の3つについて分かりやすく解説します。


■ 強迫性障害とは

強迫性障害とは、「強迫観念」と「強迫行為」がセットになってくり返される不安障害の一つです。代表的な症状としては以下の3つが挙げられます。

① 強迫観念

ある出来事が不安になり、頭から離れなくなるイメージ。
例:

  • 「家の鍵を閉め忘れたかもしれない」
  • 「コンロの火を消し忘れたかもしれない」

本人も「考え過ぎだ」と理解しているにも関わらず、不安が消えません。

② 強迫行為

強迫観念によって生まれた不安を消すためにする行為。
例:

  • 何度も戸締まりを確認する
  • 家に戻って火の元を何度も確かめる
  • 過剰な手洗い、掃除

次第に、強迫行動の時間が増し、遅刻など日常生活に大きな支障をきたします。

③ 巻き込み

症状が重くなると、本人の不安の解消を家族や周囲の人へ強制し始めます。
例:

  • 家族にも過剰な手洗いを強制する
  • 自分が決めた手順通りに行動するよう押し付ける

家族や他者も疲弊し、人間関係が深刻に悪化してしまうケースも珍しくありません。過去には、日本でも巻き込みが殺人事件にまで発展してしまったケースが、いくつも報道されています。


■ 強迫行為の具体例

強迫性障害の症状はさまざまですが、代表的なものを分かりやすく整理すると以下のようになります。

● 不潔恐怖

「自分が汚れている」「細菌がついている」と感じ、何度も手洗いや入浴、掃除を繰り返す。

● 加害恐怖

「自分が誰かを傷付けてしまったのでは?」という不安から、相手に確認を何度も求めてしまう。

● 儀式行為

自分が決めた手順で行動しないと不安が高まり、日常生活すべてが儀式化してしまう。

● 数字へのこだわり

「この数字は不吉」「この数字じゃないとダメ」と極端にこだわってしまう。

● 物の配置・左右の対称性への執着

物が自分の基準どおり配置されていないと強い不安が生じる。


■ 巻き込みとは?

巻き込みは、強迫性障害が悪化した際に見られる行動で、患者本人が不安を解消するための強迫行為を周囲に要求することを指します。

たとえば

  • 家族にも手洗いをさせる
  • 自分の儀式行動に家族を協力させる
  • 何度も確認を求める

といった行為が続くと、家族は精神的にも身体的にも疲弊してしまいます。

実際、巻き込みは強迫症患者の90%以上に見られ、家族関係の破綻や共倒れにつながりやすい深刻な問題です。


■ 強迫性障害の主な治療法3つ

① 薬物療法(SSRI)

治療では主に**SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)**と呼ばれる抗うつ薬を使います。

● 代表的なSSRI

  • フルボキサミン(ルボックス/デプロメール)
  • パロキセチン(パキシル)

不安を軽減し、強迫行為への衝動を弱める効果があります。ただし強迫性障害は薬が効きにくい傾向があるため、通常より多めの量が必要なこともあります。

● 注意点

  • 薬で「完治」するケースは少ない
  • 副作用が強く出る場合がある
  • 単独では効果が不十分なため、後述する「曝露反応妨害法」と併用することが重要

② 曝露反応妨害法(ERP)

ERPは強迫性障害に最も効果があるとされる心理療法です。

● 曝露とは

強迫観念が生じる不安を感じる状況にあえて身を置く。

● 反応妨害とは

不安を打ち消す行為(強迫行為)を意図的に我慢する。

● 実際の治療例

手洗いを1時間してしまう人の場合、
「今日は60分以内に抑える」という目標を設定し、徐々に時間を短くしていきます。

● 注意点

  • 心身の負担が大きいため無理は禁物
  • 薬物療法との併用が望ましい
  • 専門医や臨床心理士と相談しながら進めることが必須

③ 巻き込みを防ぐ

巻き込みは家族が疲弊し、家庭崩壊に繋がるリスクが高いため、最優先で対策すべき問題です。

● 本人が取り組むこと

  • 過度な要求が周囲を疲弊させていることを理解する
  • まずは「自分で完結する状態」に戻すことを目指す
  • できる範囲で妥協点を見付ける

● 家族・周囲が取り組むこと

  • 「できること/できないこと」を明確に話し合う
  • 絶対に無理をしない
  • 限界を超える前に、専門機関・医療機関へ相談する
  • 必要であれば距離を置くことも選択肢にする

巻き込みを断ち切ることは、本人の回復にも家族の安全にも不可欠です。


■ まとめ ― 治療は長期戦。早めに相談を

強迫性障害は、生まれ持った性質、育ち、ストレス、感染症などさまざまな要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。

主な治療法は以下の3つです。

  1. 薬物療法(SSRI)
  2. 曝露反応妨害法(ERP)
  3. 巻き込みを防ぐ対応

強迫性障害は、日常にある「普通の行動」(手洗い、戸締まり確認)が度を越えてしまうだけに、本人も家族も「性格の問題」と誤解しやすい病気です。

しかし、「やめたいのにやめられない」「考えたくないのに考えてしまう」状態は、明確に治療が必要なサインです。

生活に支障がある、周囲を巻き込んでしまう、不安で身動きが取れなくなる――。
そんな状態になったと感じたら、一人で抱え込まず、早めに医療機関へ相談しましょう。

安心して生活できる未来は、必ず取り戻せます。