休職した方が良いサイン

「どれくらいうつが重くなったら休職したほうがいいのか」「症状がどの程度なら休む判断をすべきなのか」。これは、多くの人が悩むテーマです。今回は、休職を検討したほうがよいサインと、よく誤解されがちなドクターストップの考え方について、できるだけ分かりやすくお話しします。

本人の「休みたい」という気持ちは、重要なサイン

まず最も重視されるのは、本人が休みたいと思っているかどうかです。
うつのつらさや体調の限界は、外からは分かりにくく、最終的には本人にしか分からない部分が多いものです。だからこそ、「休みたい」と感じている時点で、すでに相当きつい状態であることがほとんどです。

仕事を病気で休むことは、決して甘えではありません。これまで働き、税金や社会保険料を納めてきた人には、休む権利があります。「休みたいと思う自分は弱いのではないか」と自分を責める必要はありません。体と心を守るために休むことは、正当な選択です。

周囲の意見は、冷静な判断材料になる

次に大切なのが、周囲の意見です。
本人は「まだ頑張れる」と思っていても、上司から「一度休んだほうがいい」「精神科を受診したほうがいい」と言われたり、家族から「少し休んだら?」と心配されている場合、それは危険信号であることが少なくありません。

うつ状態の人は、自分の限界を正確に判断できなくなりがちです。一方で、周囲の人は客観的に変化を見ています。周囲が口をそろえて休養を勧めているなら、その声に耳を傾けることはとても重要です。

「出勤できている=働けている」ではない

職場に行けているかどうかだけで判断するのは危険です。
出勤しても、1時間以上何も手につかずぼんやりしている、普段の3割程度しか仕事ができていないという状態であれば、無理に続ける必要はありません。

さらに問題なのは、出勤することで評価を下げてしまうケースです。
無理に出社した結果、何もできずに座っているだけ、イライラして周囲に当たってしまう、涙が止まらなくなる――。これらは病気の症状ですが、周囲からは「怠けている」「感情的な人」「仕事ができない人」と誤解されることがあります。

回復後に挽回することは可能ですが、時間と労力がかかります。それなら、一度しっかり休んで回復してから復帰したほうが、長期的にはプラスになることが多いのです。

食事・睡眠・身体症状は、重症度の重要な指標

症状が進むほど、生活の基本が崩れていきます。
食事が十分にとれていない、睡眠がほとんどとれていない、体重が急激に減っているといった場合は、休職を強く勧めます。

「1日1食は食べています」と言っても、おにぎり1個だけでは十分とは言えません。「眠らなくても大丈夫」と感じていても、それは体が限界に近づいているサインであることが多いのです。

また、職場に行くたびに動悸がする、涙が自然に出てしまうといった症状も、心身が限界に達しているサインです。

「死にたい気持ち」があるときは、迷わず休む

仕事は続けたいけれど、「死にたい」という気持ちがある場合は、何よりも優先して休む必要があります。
さらに、過労死ラインとされる、直近数か月で月80時間以上の残業、あるいは1か月で100時間を超える残業があり、うつ症状が悪化している場合も、休職を勧めるケースが多くなります。命を守ることが最優先です。

どれか一つでも当てはまれば、休職を検討してよい

これらのポイントは、すべてが揃わなければいけないわけではありません。どれか一つでも当てはまるなら、休職を検討する十分な理由になります。

精神科に「ドクターストップ」はあるのか?

ここでよくある誤解について触れておきます。
精神科医は、「あなたは重症だから強制的に休みなさい」と命令することは基本的にありません。その代わり、「休んだほうがいいのではないか」と提案します。

精神科医療では、インフォームド・コンセントが非常に重視されます。医師が一方的に決めるのではなく、症状や治療方針を説明し、本人と話し合いながら決めていくのが基本です。
そのため、「休みましょう」と言われたから軽症、「休みなさい」と言われないから大丈夫、という判断は誤りです。重症であっても、強制ではなく提案という形をとるのが原則なのです。

人権を重視する精神科医療の考え方

精神科では、人権を非常に重視します。本人の判断能力が保たれている限り、意思を無視して治療を進めることはしません。
ただし、妄想などによって正常な判断ができず、自傷他害の恐れがある場合には、医療保護入院や措置入院といった厳格なルールのもとで強制的な治療が行われることもあります。

これほど厳しい条件があるからこそ、外来診療では「一緒に考える」という姿勢が大切にされているのです。

まとめ:休むことは、回復への第一歩

休職は逃げではなく、回復のための戦略です。
医師が強制的に止めるのではなく、本人の意思を尊重しながら、最善の選択を一緒に考えていく。それが精神科医療の基本姿勢です。

もしこの記事に書かれたサインのいずれかに心当たりがあるなら、一人で抱え込まず、休む選択肢を真剣に考えてみてください。心と体を守ることが、結果的にあなたの人生と仕事を守ることにつながります。