【うつ病と家事】無理をしないことが回復への第一歩――料理や家事ができないのは「怠け」ではありません
うつ病になると、日常のさまざまな行動が今までのようにできなくなります。特に、料理や掃除、洗濯といった家事は、見た目以上に複雑でエネルギーを使う作業です。
「何もしたくない」「料理をする気力が出ない」という状態は、決して甘えではなく、病気の症状の一つ。無理をして行おうとすると、かえって症状を悪化させてしまうこともあります。ここでは、料理や家事をめぐるうつ病の特徴と、その対処法について丁寧に解説します。
■ 料理は複雑なマルチタスク作業
料理というのは、実はとても複雑なプロセスを必要とする作業です。
まず献立を考え、必要な材料を買い、調理手順を組み立てながら同時にいくつものことをこなしていきます。
たとえば、お湯を沸かしながら野菜を切る、焼きながら味噌汁を作る、といったように、いくつもの作業を同時進行で行う「マルチタスク能力」が求められます。主婦や一人暮らしの方が2~3品の料理を作るときも、この同時進行が欠かせません。
しかし、うつ病の人にとってはこの「段取りを考えながら動く」という行為が非常に難しいのです。脳の処理能力が低下し、注意力や判断力が落ちているため、料理のように複雑な手順を要する作業は大きな負担になります。
そのため、重いうつ状態の人が毎日カップラーメンやコンビニのおにぎりだけで過ごしてしまうのは、決して珍しいことではありません。中には白米しか食べられないという人もいます。これは怠けではなく、**「病気によって料理ができない状態」**なのです。

■ 「料理ができる=ある程度回復している」のサイン
うつ状態では、食事を作れないのが当たり前です。無理に頑張って作ろうとすると、疲労感が強くなり、かえって回復を遅らせてしまいます。
調子が悪いときは「今は休む時期」と割り切り、家族に協力をお願いしたり、お惣菜やミールキットをうまく活用しましょう。
最近では、電子レンジで温めるだけの栄養バランスの取れたお弁当も増えています。そうした便利なものを利用することは、「手抜き」ではなく「自己管理」です。
一方で、「今日は自分で料理をしてみようかな」と思えるようになった時は、病状が少し回復しているサイン。料理が作れるようになったということは、集中力や意欲が戻り始めている証拠でもあります。医師も「料理ができているかどうか」で、患者さんの回復度を判断することがあります。

■ 「家事をやりたくない」と思うのは自然なこと
うつ病の人がよく口にする言葉のひとつが「家事をやりたくありません」。
しかし、これは怠けではなく、心と体のエネルギーが枯渇している状態です。無理をして「頑張らなきゃ」と自分を追い込むと、さらにエネルギーを消耗してしまいます。
大切なのは、「できない自分」を責めないこと。
できないことを認めるのは、決して弱さではありません。むしろ「今は休む時期」と自分を受け入れることこそ、回復への第一歩です。うつ病の人はまじめで責任感が強い人が多く、「もっと頑張らなければ」と自分を追い込む傾向があります。しかし、それこそが病気を長引かせる原因にもなります。
無理して家事を完璧にこなそうとせず、「今日は洗濯だけできた」「ご飯を炊けた」など、できたことに目を向けましょう。少しずつできることが増えていけば、それが自然な回復の流れです。

■ 自分の疲労度を知る簡単セルフチェック
自分の疲れ具合を知る方法として、簡単な自己診断があります。
「もし休日に好きなだけ寝ていいとしたら、何時まで寝ていたいか?」を考えてみてください。
- 普段の起床時間と2時間ほどの差しかない場合:通常の疲労レベル
- 昼まで寝ていたいと思う場合:かなり疲労が溜まっているサイン
健康な人は、365日ほぼ同じ時間に目覚めて活動できるリズムを持っています。疲労が溜まっている人ほど「まだ寝ていたい」と感じるようになります。
仕事や生活の疲れは少しずつ蓄積し、週末になるとピークを迎えることが多いものです。休日に昼まで寝てしまうようなら、それは身体が「今は休んで」とサインを出している状態です。
「その日の疲れはその日のうちに癒す」。この意識を持つことが、うつの再発防止にもつながります。
■ 「休む」と「動く」のバランスが大切
うつ病の治療では、「休むこと」と「少しずつ動くこと」のバランスが重要です。
特に発症初期の1ヶ月ほどは、無理をせずに休養を取ることが何より大切です。朝起きることさえつらく、エネルギーがまったくない状態で無理に朝散歩などを始めると、かえって症状が悪化することがあります。
ある程度エネルギーが回復してきた段階で、少しずつ活動量を増やしていくのが理想です。
最初は短時間の外出や、簡単な家事からでも構いません。
ただし、その判断は自己流ではなく、主治医と相談しながら行うようにしましょう。
薬の効果が安定してきて3ヶ月ほど経ったら、「一日中寝て過ごす生活」から徐々に抜け出すことが目標になります。
少しずつ外に出て日光を浴びたり、人と話したりすることで、脳のリズムも整い、気分の波も安定していきます。
■ 「楽しみ」を取り戻すことが回復の鍵
うつ病の人は、「毎日が楽しくない」「何をしても心が動かない」と感じやすくなります。
しかし、ほんの少しでも「楽しい」と思える時間を持つことが、回復を大きく後押しします。
好きな音楽を聴く、好きな香りのお風呂に入る、ペットと触れ合う――。
そうした小さな「楽しみ」や「癒しの時間」は、脳に安心感を与え、ストレスを和らげます。
遊びやリラックスは、単なる気晴らしではなく、「心のエネルギー補給」です。
義務感ではなく、「やってみたい」と思えることを、できる範囲で取り入れていきましょう。
■ まとめ:できない自分を責めず、「今できること」を大切に
うつ病の回復には、「無理をしない」「自分を責めない」「少しずつできることを増やす」という3つの姿勢が大切です。
料理や家事ができないことは、決して怠けではありません。
むしろ、「今の自分を守るための自然な反応」なのです。
できないときは無理をせず、家族やサービスの助けを借りながら、心と体の回復を最優先にしましょう。
そして、少しずつ「やってみようかな」と思えるようになったら、その小さな一歩こそが回復の証です。